脳の病気について

頭蓋咽頭腫の治療
~視機能改善と下垂体機能の温存をめざした神経内視鏡手術~

帝京大学では、下垂体・内視鏡手術センターを開設し、脳神経外科の辛教授、後藤講師、樋口講師、宇野准教授ら、専門のスタッフが中心となり、耳鼻咽喉科、眼科、小児科、内分泌内科の医師らと協力して、頭蓋咽頭腫と診断された患者さんの治療あたっています。病状や治療ついて、ご不明な点がある方は、お気軽に相談ください。

ムービー 「内視鏡による脳神経手術」

帝京大学脳神経外科
https://www.teikyo-hospital.jp/medical/brain/
下垂体・内視鏡手術センター
https://www.teikyo-hospital.jp/medical/specialty/pituitary.html

当院下垂体・内視鏡手術センターの医師は、『国民のための名医ランキング(2024~2026年版)』の中で脳神経外科領域の「名医」として紹介されています。このランキングは、医師間調査で厳選された医師が掲載される、最も信頼のおける指標の一つです。2024年4月現在、首都圏で下垂体腫瘍・頭蓋底腫瘍に対する内視鏡手術を専門とする、65歳未満の常勤医師では、当院の辛教授が唯一、選出されています。

帝京大学医学部附属病院は、下垂体腫瘍・頭蓋咽頭腫をはじめとした頭蓋底腫瘍や、様々な脳腫瘍について、多くの手術経験のある脳神経外科医(辛教授、後藤講師、樋口講師、宇野准教授他)、最新の内視鏡器機、さらに、病気を熟知したスタッフと明るく開放的な病棟のすべてそろっています。皆さんが、治療を安心して受けることができるよう、全スタッフが、日々、検討を重ね、努力しています。お困りのことがありましたら、いつでも遠慮なく、下垂体・頭蓋底腫瘍外来まで、ご相談ください。

  • 下垂体腫瘍・頭蓋咽頭腫の内視鏡手術に熟練した脳神経外科医が複数人、常勤している
  • 耳鼻咽喉科医・内分泌内科医が、積極的に下垂体腫瘍の診療に加わっている
  • 最先端の4K‐ICG内視鏡が導入されている
  • 頭蓋底腫瘍に対する手術が多く行われている

頭蓋咽頭腫とは、どんな病気か?

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頭蓋咽頭腫は、小児から成人、高齢者にまで発生する脳腫瘍です。一般に病理組織診断では“良性腫瘍”に分類されますが、実際には、治療が最も難しい脳腫瘍の一つといわれています。これは、頭蓋咽頭腫が、間脳、視床下部、下垂体といった、人間の脳の中で、意識や意欲、認知機能などに関係する部位や、視覚情報を脳に伝える視神経の近傍に発生することによります。これらの部分に発生した腫瘍は、病変の増大と共に、生きていく上で欠くことのできない、脳の重要な機能に悪影響を及ぼします。このため、症状が軽い早期の治療が必要となります。

ここでは、頭蓋咽頭腫に対する神経内視鏡手術について、ご紹介していきたいと思います。

頭蓋咽頭腫に対する従来の治療法と、その問題点

頭蓋咽頭腫に対しては、1990年以降、様々な手術法が開発されてきました。これまでの手術は、顕微鏡を使用して、脳を外から観察しながら腫瘍に到達する方法が、最も一般的でした。しかしながら、最新の手術用顕微鏡を使用しても、脳の深い部分に発生する腫瘍を外から観察するアプローチには限界があります。このため、いくら大きな開頭(頭蓋骨を開いて病変に到達する手術法のこと)を行ったとしても、この方法では、脳への影響を少なくして、安全に腫瘍を切除することは難しい場合が多いように思います。

このように、今までの手術法では、“治療が非常に難しい”とされてきた頭蓋咽頭腫ですが、近年、“神経内視鏡手術”をはじめとした様々な治療技術の進歩により、さらに治療法の選択肢が広がっています。つまり、今まで治療が難しかった病変に対しても、脳への悪影響を最小限に抑えた、安全で有効な治療を提供することができるようになっているのです。

しかしながら、現実には、神経内視鏡手術をはじめとした、最新の手術方法を実践することができる脳神経外科医の数は、国内では非常に限られています。そのため、依然として、多くの施設において、患者さんに対し、顕微鏡下のみが唯一の選択肢として提示されています。

頭蓋咽頭腫に対する神経内視鏡手術

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当科では、全国にさきがけ、1998年より神経内視鏡単独による鼻腔からの手術を下垂体腺腫に対して行ってまいりました。この手術法を応用し、2009年より、頭蓋底腫瘍に対する新たな手術法を開発し、開始しております。さらに、2010年には、脳室という脳内の空間を経由した、内視鏡下低侵襲手術についても開始しております。神経内視鏡を用いることで、従来、脳を圧迫しながら行っていた手術を、本来、人間の体に備わっている自然の空洞を利用して、頭の中に入って行うことできるようになりました。こうして、脳の損傷を最小限に抑えて、脳深部の広い範囲へ伸展した腫瘍も、直視下に切り取ることで、さらに安全な手術が可能となりました。

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従来の顕微鏡下手術と比較した神経内視鏡手術の利点

頭蓋咽頭腫は、通常、視交叉(左右の視神経は頭の中に入ると中心で交差するんです!)や下垂体、視床下部といった、体の状態(水分バランスや体温、体の代謝など)を一定に保つためのホルモン分泌に重要な役割を担う部位に浸潤して増殖します。顕微鏡下に頭の外から観察する手術では、腫瘍は、こうした重要な構造の陰になってしまいます。このため、これらの構造物、特に、下垂体といった、体の様々な機能を調節するホルモンを放出する内分泌器官を犠牲にして手術を行うことがしばしばです。それ以外には、後錐体到達法(posterior transpetrosal approach)という非常に手術侵襲(患者さんの体へ負担)の強い手術法を行わない限り、病変を直視して手術を行うことはできません。

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これに対し、神経内視鏡手術では、鼻腔を経由して、脳の底から腫瘍に到達します。内視鏡本来の性能である広い視野のもとでの手術が可能となります。従って、最大の利点は、脳を圧迫せず、こうした視神経や下垂体と腫瘍との境目をしっかりと確認した上で、切除ができることにあります。

腫瘍が非常に厄介な場所に存在しているために、全ての患者さんで、これらの部分への悪影響をゼロにすることは、なかなか難しいのですが、内視鏡下に手術を行うことで、腫瘍の摘出と機能の温存について、バランスのとれた安全かつ有効な手術を提案できるのです。

ここでは、当院で行っている、神経内視鏡を用いた手術法について、さらに詳しく説明します。

神経内視鏡下で行う経鼻的頭蓋底手術

鼻腔を経由して内視鏡下に病変に到達する手術方法は、顕微鏡下での開頭手術と比べて、頭部の切開が必要なく、脳の底から到達することで治療が可能であるため、術後の患者さんの身体への負担も 少なく抑えられるメリットがあります。

現在は、様々な施設で内視鏡手術が行われるようになってきていますが、その多くで、欧米で開発された手術の方法を踏襲した“endonasal法”という手技が行われています。これは鼻腔の奥で 広範囲に鼻粘膜を除去して、頭蓋底に到達する方法で、世界中で広く行われている方法です。比較的鼻が大きい欧米人に適した手術法ですが、鼻腔が小さな日本人(アジア人)では、相対的に破壊される鼻腔内の構造が広範にわたってしまうため、適しているとは言いがたいところがあります。鼻腔や副鼻腔は、空気を保温・保湿して、呼吸器へ送るといった大切な機能を有しています。このため、endonasal法では、こうした機能を温存することができず、必ずしも低侵襲とはいえません。また、鼻粘膜の発達した日本人では、鼻腔内の構造を広い範囲で破壊してしまう割には、あまり広い視野が得られていないといったデメリットがあります。

これに対して、当科では、以前から“trans-septal法”といった、独特の手術方法を開発し、行ってまいりました。この方法では、手術中は、鼻粘膜を内側から剥離して、一時的に術野の外側に除けてから脳の深部に到達します。手術中はendonasal法 に比べて広い術野を確保することが可能ですが、手術終了後は、剥がした鼻粘膜をもとどおり鼻中隔に戻すため、鼻腔内での鼻粘膜や副鼻腔の損傷を最小限に抑える ことが可能です。また、鼻腔の小さな患者さんにも安全で苦痛の少ない治療を行っております。こうした患者さんの負担軽減を考慮した“日本人(アジア人というべきでしょうか)に適した”手術法の開発は、近年、国内外の学会でも高い評価を受けております。特に、韓国、中国、台湾、インドといったアジア諸国からは非常に注目を受けています。このように、新たな手術法や手術器械の開発を常日頃から行うことで、術後の患者さんの不快感を少しでも軽減できるよう、努力しています。

また、鼻腔を経由して頭蓋内の腫瘍にと到達する場合、多くの医師が懸念するのが、手術後に髄液鼻腔から漏れ出す“髄液鼻漏”といった状態です。下垂体病変の手術には多く経験がある病院でも、頭蓋咽頭腫に対しては経鼻手術を躊躇する一番の原因が、こうした髄液鼻漏の対処が確立していないことにあります。これについても、当院では“多層性筋膜再建法(multilayer fascial closure)”という方法を開発し、術後髄液漏を克服することに成功しています。

小さな開頭で脳室を経由して行う内視鏡下低侵襲手術

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鼻腔を経由する手術以外にも、内視鏡を使用することで可能となる手術があります。頭蓋咽頭腫は、しばしば第三脳室といわれる、脳の中心部で、髄液に満たされている空間に進展しています。このため、こうした自然の空間を利用して、手術をする方法です。

具体的には、頭蓋骨を前頭部で径3㎝程度、楕円形に開頭し、前頭葉を経由して、脳室内に進入します。頭蓋骨の外から脳内を観察する、従来の手術では、脳室内を観察しようとしても、非常に限られた視野しか得られませんでした。しかしながら、内視鏡を利用して、脳室の中に入り、病変を観察することで広い視野のもとで、安全な手術が可能となるのです。

経鼻での内視鏡手術と比較した場合、腫瘍が比較的脳の中心に存在し、小さい場合に、治療がしやすいように思います。また、術後についても、低侵襲な経鼻的内視鏡手術より、さらに速やかな回復が期待できます。しかしながら、腫瘍が比較的大きく、広い範囲に進展している場合には、部分的な切除しかできない場合があり得ます。このため、比較的大きく、視神経、視交叉周辺から下垂体にかけて存在するような頭蓋咽頭腫の患者さんでは、経鼻手術が適していると思われます。

放射線治療の選択について

頭蓋咽頭腫に対する放射線治療はIMRTによる分割照射(25分割)が、安全かつ効果的!
:10年間の腫瘍制御率90%以上を達成

手術の次に、治療の鍵を握るのが、放射線治療です。放射線治療には、一般的な放射線の分割照射(ライナック、IMRT、トモセラピー)、ガンマナイフ、サイバーナイフ、重粒子線な ど、さまざまです。こうした治療法を受ける前に、患者さんが必ず確認しておかなければならないのは、その治療を受けた場合に、長期的に見て治療が成功する可能性や安全性がどの程度であるかということです。

頭蓋咽頭腫が発生する鞍上部といわれる脳内の部分で、最も放射線の悪影響が出やすいのが、視神経や視交叉などの、ものを見る機能に関係した神経となります。頭蓋咽頭腫では、ほとんどの患者さんで、腫瘍が視交叉に接して存在しています。手術で腫瘍が残存する場合も、“視神経や視交叉と強く癒着していて、これ以上切除すると術後に視力や視野の、悪化が起こりそう”と判断された場合が最も多いです。

それでは、こうした視神経近傍に発生する頭蓋咽頭腫に対し、最も安全で効果的な放射線療法は、なんでしょうか。それは、多くの施設で行われている一般的な放射線の分割照射による治療法です。現在までに、頭蓋咽頭腫の放射線治療に対し、様々な報告がなされていますが、分割照射による放射線治療が、腫瘍の制御率(腫瘍の増殖をストップし、照射した腫瘍がこれ以上大きくならない割合)と合併症の危険性のどちらについても、最も成績が良好です。

このため、当院では、頭蓋咽頭腫の患者さんで、放射線治療が必要となった場合に、放射線治療機械とCTが一体化し、強度変調放射線治療(IMRT: intensity-modulated radiation therapy)及び画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy: IGRT)といった技術を駆使した照射が可能な、放射線治療装置治療による、局所型の分割照射をお勧めしています。

ガンマナイフによる放射線治療:10年制御率が40%程度

通常の放射線治療に比べて、非常に強い放射線を照射する治療法に、ガンマナイフがあります。この方法では、比較的高い腫瘍の増殖抑制が期待されています。しかしながら、その分、周辺の正常構造への被爆も通常より高くなるため、視神経に接して存在する頭蓋咽頭腫に対しては、十分な放射線量を照射しようとすると、悪影響はほぼ必発と言えます。したがって、 “安全で効果的”とは言い難いのが現状です。現実的には、視神経の悪化を免れるために、こうした部位への照射線量を減らし再発の危険性を受け入れるか、または、良好な腫瘍制御(腫瘍の増殖をストップし、照射した腫瘍がこれ以上大きくならない状態)を期待して、視力・視野の悪化の危険性を受け入れるか、非常に難しい選択をせまられることとなってしまいます。

サイバーナイフによる放射線治療:成功の可能性はやや劣るが、合併症も少ない

サイバーナイフは、一般的な放射線の分割照 射(ライナック)や重粒子線と比較し、治療精度が向上し(誤差1~2mm程度)、分割の回数を減らすことで治療効果を期待し、合併症の危険を減らした最新の治療機械といえます。それでも、最近の治療成績では、頭蓋咽頭腫に対する腫瘍の制御率(腫瘍の増殖をストップし、照射した腫瘍がこれ以上大きくならない割合) は、十分とはいいがたいように思います。この治療法は、合併症の危険性と治療効果の面から考えると、効果・合併症の危険性がともに高い、ガンマナイフ・重粒子線などの治療の対極な存在といえるでしょう。

放射線治療を成功させるための必須条件とは

放射線治療を成功させるための最も重要な鍵は、その前の外科的摘出術の時点から、計画的に治療を行っていくことにあります。頭蓋咽頭腫の成分の中で、放射線治療が奏功しにくいのが、嚢胞(液体成分を含んだ膨らみのある部分のこと)になります。また、残存腫瘍があまりに大きい場合も、照射範囲を広げることとなり、治療が困難となります。
このため、最も大事な条件としては以下のようになります。

  1. 1) 放射線治療の前に徹底した腫瘍切除を行い、腫瘍の大きさを十分に減らすこと
  2. 2) 腫瘍の嚢胞成分をなくすか、嚢胞壁の十分な開窓を行うこと
  3. 3) 必要に応じて限られた範囲に計画的に十分な線量での照射を行うこと

こうした治療を行うことで、手術のみでの治療では、合併症が危惧されるような場合でも、危険性を最小限に抑え、良好な腫瘍制御が得られるのです。

当院で神経内視鏡手術を行った実際の手術症例

症例1
視力の低下と視野の悪化で見つかった、50歳代女性の頭蓋咽頭腫、経鼻的に手術を行った。
手術前と手術後の写真

手術では、下垂体を温存し、腫瘍を摘出。術後、一時的に下垂体機能が低下したが、改善し、5年以上が経過するが再発を認めていない。

症例2
頭痛精査で撮ったMRIで見つかった60歳代男性の腫瘍。経鼻的アプローチにて、下垂体を温存し、腫瘍は全摘出された。術後、一旦、下垂体機能が低下したが、3カ月目で改善を示している。
手術前と手術後の写真
症例3
前医にて、開頭手術後に残存病変が急速増大し、当科紹介となった30歳代女性の頭蓋咽頭腫。
手術前と手術後の写真

経鼻的にアプローチし、腫瘍は摘出され、下垂体機能の低下も認められなかった。しかしながら、摘出した腫瘍の組織を分析したところ、比較的進行の早い部分が見受けられた。このため、ある程度、経過観察を行った後に適切なタイミングで放射線治療を追加した。治療後3年以上が経過するが、下垂体機能は温存され、腫瘍の再発も認められていない。

症例4
頭痛の精査でみつかった40歳代女性の嚢胞性頭蓋咽頭腫。術前検査では、下垂体ホルモンの低下も認めず、まったく無症状であった。下垂体機能を温存し、嚢胞の開窓と腫瘍実質成分を切除すべく、経鼻的アプローチにて手術を行った。
手術前と手術後の写真

術後、病変は十分に切除され、下垂体機能の低下なども認めずに経過。術後5年目となるが、腫瘍の再発を認めていない。

症例5
視力・視野の著しい悪化で見つかった70歳代男性の嚢胞成分を主体とする頭蓋咽頭腫。後期高齢者であり、体の負担を最小限に抑えた治療が好ましいと判断され、当科を紹介となった。このため、経鼻的に腫瘍の切除術を施行した。
手術前と手術後の写真

術後、一時的に下垂体機能が低下したが、すみやかに回復した。現在は、手術から5年以上が経過し、80歳を超えているが、下垂体ホルモンの低下もなく、再発も認められずに順調に経過している。

症例6
腫瘍内出血を起こして急性水頭症にて発症した50歳代男性の腫瘍。第三脳室内の頭蓋咽頭腫であり、小開頭での経脳室アプローチでの切除術を行った。
手術前と手術後の写真

腫瘍は摘出され、下垂体機能の低下も認められず、順調に経過しいている。

症例7
激しい頭痛と視力・視野障害の検査で見つかった10歳代男児の頭蓋咽頭腫。腫瘍は、第三脳室内に主に存在しており、下垂体機能の温存を最優先に考え、小開頭での経脳室アプローチで腫瘍の切除を行った。
手術前と手術後の写真

術中所見で、腫瘍は視床下部に侵入しており、意識障害などの後遺症を避けるべく、この部分を一部残存させた。術後は、尿崩症(視床下部での水分バランスの中枢の機能低下による、尿量の増加)を認めているが、内服薬で症状は落ち着いている。幸い、成長ホルモンなど、成長や成熟に必要なホルモンには異常を認めていなかった。残存部分については、慎重に経過観察を行っており、増大などあれば、放射線治療を追加するか相談する。

当科における頭蓋咽頭腫の治療方針:最も大切なのは“最初の一手”

頭蓋咽頭腫の患者さんが、安心して治療を受ける上でのキーポイントとしては、以下の点が重要であると思われます。

  • 内視鏡下での頭蓋底手術、特に頭蓋咽頭腫などの好発部位である、鞍上部や視交叉周辺、第三脳室内の病変の手術に習熟している医師の下で一貫した治療を受ける
  • 手術の適応のみならず、放射線治療の効果と、最適な治療のタイミングについて、十分な知識と経験がある医師のいる施設で治療を受ける
  • 間脳下垂体部の解剖や内分泌に熟している脳神経外科医や内分泌内科の医師が常勤している施設で治療を受ける

当科では、頭蓋底腫瘍や脳腫瘍の治療を専門とする基幹病院として、以前よりこれら難治性疾患の治療に携わってきました。現在までに蓄積された治療データを分析し、さらに神経内視鏡手術を中心とした、最新の治療技術を駆使することで、多くの患者さんに安全で良好な治療効果を提供することができるようになっています。

近年は、年間70例程度、頭蓋底病変に対する内視鏡下手術を行っております。この内、頭蓋咽頭腫については、毎月1〜3例程度、患者さんが入院されます。国内のみならず、海外の施設と比較しても、最も経験豊富な病院の一つといえます。

頭蓋底腫瘍の治療では、第一回目の初期治療が、何よりも重要となります。初期治療(初回の手術)が適切に行われている場合には、 ほとんどの患者さんで、症状の改善が達成されるため、その後の治療経過が順調に進みます。特に頭蓋咽頭腫の中でも、複数の嚢胞(液体成分を含んだ膨らみの部分)のある例や、増殖速度の速い成分を含むような例では、部分的な切除の後に、残った病変が急速に増大することもあり得ます。したがいまして、MRIやCTなどの画像診断で、頭蓋咽頭腫が疑われる場合には、近医で“とりあえず、できる範囲での治療”を受ける前に、早めに御相談いただければ幸いです。初回手術で、腫瘍をしっかりと切除することが、“治癒”への第一歩となりえます。

頭蓋咽頭腫という病気が、脳腫瘍の中でも極めて稀なものであり、さらに完治させることが一般的に難しいといわれていることを考えると、豊富な治療経験のある医師のもとで、最初から一貫して治療を受けることを強くお勧めします。

当院における頭蓋咽頭腫の治療の特徴

  1. 1) 熟練した専門医が、治療の必要性から治療方針、経過観察に至るまで、一貫して御相談を受け、一人一人の患者さんに最適な治療計画を御提示いたします。
  2. 2) 手術では、国内外で多くの経験を積んだ神経内視鏡手術のエキスパートによる低侵襲手術を行っており、患者さんの体の負担を最小限に抑えた手術法を採用しています。
  3. 3) 神経内視鏡を用いることで、安全な摘出が困難とされる上方や側方、頭蓋底の深くに進展した腫瘍でも、直視下で無理なく切除することが可能です。
  4. 4) 手術での摘出に著しい危険が伴う部分の腫瘍については、安全かつ充分な範囲の摘出に留め、残存部に対して必要に応じて放射線治療による追加治療を行います。
  5. 5) 頭蓋咽頭腫の治療に精通した脳神経外科医と、内分泌内科医、放射線科医、さらに必要に応じて、小児科医、小児内分泌内科医、耳鼻科医の協力のもと、治療を行っています。

受診を希望される方へ

  • 疾患・治療に関するご相談につきましては、担当医の外来を受診してください。その際、過去におとりになられた画像(MRI・CTなど)や 検査結果、現在かかりつけの医師からの紹介状などがありますと、病状の判断に大変役立ちますので、お持ちください。一人一人の患者さんをしっかりと診察させていただくため、外来は完全予約制とさせていただいております。お手数ですが、帝京大学医学部附属病院の外来予約センター(03-3964-1498、 8:30-17:00)に電話をして予約をお取りください。
  • 当院では、他院にて治療が困難であった、患者さんに対する治療を行っております。頭蓋咽頭腫に限らず、頭蓋底腫瘍の治療でお困りの方は、どなたでも、遠慮なく御相談下さい。尚、手術などの治療が必要な場合、外来受診から入院までにかかる時間は、患者さんの症状や御病気の状態によって様々です。通常、性急に 治療を必要とする場合を除き、1-2ヶ月以上お待たせする場合があります。お待たせする場合でも、患者さんに不利益のないよう、十分に配慮させていただく 所存でありますので、どうか御了承下さい。
担当医師
脳神経外科 辛 正廣(しん まさひろ)
脳神経外科 後藤芳明(ごとう よしあき)
連絡先
帝京大学医学部附属病院 脳神経外科
〒173-8606 東京都板橋区加賀2-11-1
電話 03-3964-1211(代表)
外来受診
下垂体・頭蓋底腫瘍外来(毎週月曜日と火曜日の午前、金曜日の午前・午後)
完全予約制です。外来受診につきましては、帝京大学医学部附属病院のホームページ別ウィンドウで開くを、御参照ください。